はじめまして。

 私は、韓国・全羅南道の木浦(モッポ)市の高校で日本語を教えています。木浦市は、かの金大中前大統領のゆかりの地で、私が勤務している全南第一高校は、金大中前大統領の出身校として知られている、ようです。

 木浦は、港町で魚がおいしいところです。とくに焼酎を飲みながら食べる刺身は最高です。木浦は港町なので、性格の荒い人が多いとよく聞くのですが、私はそのようには感じませんでした。むしろ、思ったよりもテンションが低くて控えめな人が多いという印象です。特に学校の先生方にそのような感じを受けました。
 
 私がいま住んでいるところは、前任の先生から引き継いだ1ルームのアパートです。私の場合は、うれしいことにすぐに生活できるようになっていました。日本にいた時よりも狭い部屋ですが、別に部屋で踊るわけでも運動するわけでもないので、私には十分です。

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 学校には、私の他に韓国人の日本語の先生がいて、その先生が私のチューターのような感じでサポートをしてくれます。また、運のいいことに同じ学校に、英語の先生なのですが、日本に6年くらい住んでいたという先生がいて、いろいろ助けてくれます。特にその先生は私のネットワークを広げてくれています。おかげで韓国人ネットワークがたくさんできました。
 
 私の高校は、順天高校のように優秀な進学校ではなく、生徒たちは体育の時間と給食を楽しみに学校に来ているような生徒たちばかりです。勉強はしません(日本語も含)が、とにかく元気でおもしろいです。

 私が学校でもっとも驚いたことは、先生たちがみんな、長い棒を持って授業に行っていたことでした。こちらでは生徒をたたいたりすることがあるということは聞いていましたが、若い女の先生までもがやっているとは思いませんでした。
 私は今まで持ったことはありませんが、黒板けしで黒板をガツンとたたいたり、辞書で教卓をたたいたりすると静かになるので、なるほどな、と思っています。

 私の授業は、高校生は3年生が5時間、2年生が2〜3時間、さらに山本先生と同じワークショップが4時間あります。高校3年生は、去年から日本語を勉強しているのですが、ひらがなをやっと読めるような生徒が多いです。

 3年生の場合は理系クラスが日本語、文系クラスが中国語と、強制的に第二外国語を選択させられたこともあるのでしょう。さらに去年の日本人の先生は韓国語で授業をしていたそうで、私が韓国語が話せないことに対して最初の頃は文句もちらほらありました。そのため最初は3年生をどうしたものかと頭を悩ませていましたが、いまはお互いに慣れて楽しくなってきました。最近生徒たちの間では私の真似をすることが流行っているようで、よく私の口癖やパフォーマンスを真似して遊んでいます。

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 生徒から文句があったように、私は全く韓国語がわからないまま韓国に来てしまいました。

 本当に何もわからなかった。本当に「アニョアセヨ〜」くらいです。このご時世、一般の日本人のほうがもっと知っていたと思います。そのため、最初は辞書と『旅の指差し会話帳』という本とメモ用紙を手放せませんでした(今もですが・・・)。

 ここで私のかわいい韓国語失敗談をご紹介しましょう。私が木浦に行った時期はちょうどイチゴの季節です。どうしてもおいしいイチゴを安く買いたくて、レジのない八百屋さんや市場に通いつづけました。そして私は何度か買い物をするうちに、店員さんなどが帰り際に私に「アニョハセヨ〜」と言っていることに気づいたのです。

 「そうかあ!『アニョハセヨ』は『さようなら』にも使えるんだあ!!」
 と思い、次から私はいたるところで帰る時や別れ際に「アニョハセヨ」を使い始めました。

 ところがしばらく経った頃、韓国人の日本語の先生に韓国語を質問している時に、何気なく私がこの大発見について話したところ、
 「え??そんなことはありませんよ。『さようなら』は『アンニョンヒカセヨ』ですよー」
 と言われました。

 つまり、私は「カセヨ」の「k」の音が聞き取れずに「アニョハセヨ」だと思い込んでいたのです。そして店の人などが「さようなら」と言ってくれたの対し、私がいつも「こんにちは」と答えていたことが明らかになりました。韓国人の先生は大爆笑です。

 この真実が判明するまでに私は、家の近所のスーパー、八百屋、まんじゅう(韓国風餃子)屋、おでん屋、コンビニ、タクシー、そして学校とあらゆるところで帰る時に「こんにちは」を言いつづけていたのです。これは恥ずかしかったですね〜。

 でもおかげで近所に私の顔が知れ渡ったようですし、今ではいい笑い話です。いつか店の人たちに最初の頃の私をどんな風に思っていたか聞いてみたいです。

 最近では買い物もかなり慣れましたが、八百屋さんで「オレンジ10個ください」と言って正しい金額を渡しただけで、店のおばさんに「韓国語上手になったね〜」と言われたりします。これくらいで誉められるなんて、最初の頃の私は本当にひどかったんだなあとつくづく思います。でも、こんな風にちょっと誉められただけでもうれしくて、自信がつくものなんですね。

 と、まあこんな感じです。

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 簡潔に書くつもりが、修論のように長くなってしまいました。申し訳ない。また時間のあるときに第2弾をお届けしたいと思います。今回はこの辺で失礼します。みなさんお元気で。

モッポより 今 千春