順天通信その3(2003.10.31)

第2言語会話大会

 みなさん、こんにちは。

 今日は、私の生徒たちが参加した第二言語会話大会について書きたいと思います。

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 この大会は、全羅南道にある高校が参加します。全羅南道というのは、日本でいう「県」にあたります。会話大会は、日本語だけではなく、ドイツ語、フランス語、中国語などの部門に分かれています。日本語部門の参加校が全部で8校で一番多く、ドイツ語などは3校で、日本語の人気の高さが伺えます。

 会話大会では、4人の生徒が、自分達が作成した台本を暗記して演じます。そしてその発表の後、審査員が生徒4人それぞれに一問ずつインタビューをすることになっています。この大会は一年に一度開かれ、今年は10月30日の今日、開かれました。

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 私の生徒達は、夏休みが終わるとすぐに準備に取りかかり、毎日練習をしてきました。台本も自分達でほとんど作成しました。日本と韓国の年中行事について比較するというものでした。

 土曜日、日曜日も私に指導してほしいと申し出てくるなど、どちらが生徒で先生なのか分からない程、熱心に取り組んできました。

 練習をはじめた当初は、発音イントネーションが大きな問題で、頭を悩ませました。私がテープを作成し、テープの私の声を追いかけながら練習するように指導したところ、発音イントネーションはほぼ完璧になりました。

 インタビュー対策としては、台本に出てくるキーワードについての内容を問う質問を40項目ぐらい作成し、その答えを覚えさせました。

 そうするうちに生徒達の日本語能力も伸びてきて、台本に書かれていないことについても話せるようになりました。昨日は最後の練習の日だったので、夜9時ごろまで練習し、教頭先生の前でも発表するなど、一生懸命でした。

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 今日は私はビデオカメラをもって、張り切って参加しました。大会が始まると、私の生徒達の発表のイントネーションと発音は、他の学校と格段の差がありました。発表全体をみても1位は確実だと思いました。

 しかし、結果はなんと2位でした。審査結果を聞いたとき、生徒達は涙を流して、下を向いたままでした。

 私と、韓国人の先生はその結果に納得がいかないので、なぜ2位だったのか、その理由を聞きに行きました。すると発表の後のインタビューで点数を落とすことになったということでした。年中行事について「韓国でお墓参りはいつしますか」という質問を韓国人の審査員がしたそうです。

 生徒には「いつ」が「いす」と聞こえて、驚いて黙ってしまった後、「すみません、もう一度言っていただけますか」と聞き返したとのことです。そして最終的には質問に対してきちんと答えたようです。

 通常の私との練習でそのような間違えをしたことがないほど、日本語ができる生徒です。その質問にすぐに答えられなかったというだけで点数が引かれ、2位になってしまったのです。1位の高校の発表の発音やイントネーションはかなり訛りがありました。ですが審査員によると発表では私の生徒達とは同じ点数だったということです。

 審査員には日本人もいました。どうしても審査の結果には今でも納得がいきません。参加した生徒の一人は去年もこの大会に参加して、インタビューで点数を引かれて2位だったそうです。今年の大会でも2位だったため、彼はひどく落ち込んでいます。

 今回の大会のように、生徒一人に一つだけ質問をして日本語能力を評価し、それが審査結果を左右するという大会を、今後改善していくべきだと強く感じます。ですが私の意見が通る状況ではないので、とりあえず今は、大会に参加した4人がこれからも日本語をつづけて勉強してくれるように励ましたいと思います。

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 つい熱く語ってしまいました。以上です。読んでいただき有り難うございました。

韓国・順天から
山本容子