バート−ザウルガウ便り その2(2003.10.18)

オスタルギー・ブーム

 Gruess Gott! ドイツよりこんにちは。
 南ドイツは日に日に寒さが増し、10月初めには初雪が降りました!!


 さて、近頃、ドイツではオスタルギー・ブーム(Ostalgie-Welle)と呼ばれるものがあります。「オスタルギー」は「ノスタルジー」と「オスト」(ドイツ語で東を意味する)をかけており、DDR(東ドイツ)時代の生活・文化などを懐かしむ風潮です。

 1998年に私が留学していたライプツィヒは旧東ドイツなので、その時代のことに関しては、ドイツ語の先生や友人からも多く話を聞いています。青少年組織「ピオニール団」の制服。社会主義パイオニアとしての役割。労働歌。ロシア語の授業等々。今でも、東ドイツ時代の生活を懐かしんでいる旧東ドイツ市民は実際多くいるようです。

 このオスタルギー・ブームは、今年初めにドイツで放映された「Good bye Lenin!」という映画が引き金となりました。ベルリンの壁崩壊前後を舞台に、母親思いの優しい男の子、アレックスが奮闘するコメディーです。アレックスの母親は社会主義者であることを誇りに思い、それを生きがいとしている東ドイツ市民。ドイツ統一の直前に心臓発作で倒れた彼女は、8ヶ月後(つまりベルリンの壁崩壊後)に奇跡的に目が覚めます。しかし、医者から、再度母親が発作を起こした時は命の保証は無いとアレックスは知らされ、そこから彼の奮闘が始まります。ドイツが事実上統一したことを母親にわからせないよう、奔走するのですが・・・。日本でも来春に上映予定という噂です。皆さんも機会があればご覧ください。とってもおもしろいですよ。

 さて、このブームにのり、テレビでも東ドイツ時代の生活を紹介するいくつかのバラエティー番組が放映されました。私もそのうちの1つ、「DDR Show」を見ました。東ドイツ出身のゲストの当時を紹介しながら、東ドイツの全般的な説明も多く含まれ、大変興味深い番組でした。実際、番組は高視聴率を記録し、「ベールに包まれていた東ドイツの生活をよく知ることができた」という視聴者のフィードバックも多く得て、大成功をおさめたとの話です。

 しかし、この番組が放映される前は、多くの社会団体からの批判があがりました。東ドイツの生活がおもしろおかしく、その上間違って伝えられるのではないかという懸念がその大半です。「東ドイツ時代のことを西側の人が理解してくれるのは嬉しいけど、少し馬鹿にされているような気もするんだよね。」とは、旧東ドイツ出身の友人の言。


 ドイツは先日の10月3日で統一13年目を迎えました。しかしながら今でも東西の差は多く残っています。新しい失業率統計を見ても東ドイツは西ドイツに比べ2倍ほどの失業者を抱え、豊かさでも西ドイツが上回っていることは確かです。東ドイツの生活を「娯楽番組」という形で取り上げていることを見ると、東西の融合はまだ発展途上だなぁと感じてしまいます。

新井裕美